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海自イージス艦・漁船衝突：航海長聴取「捜査影響なし」　野党追及に石破氏−−衆院委　◇衆院予算委・防衛省問題　　衆院予算委員会で２９日行われたイージス艦「あたご」と漁船の衝突事故に関する集中審議は、「あたご」航海長を石破茂防衛相が自ら聴取したことに野党の質問が集中した。石破氏は「（自分は）千里眼でもないし、心も読めない。乗組員と接触しなければ、どういう状況か公表もできない。当然のことを当然行ったということだ」と突っぱねた。審議の概要は次の通り。　　三原朝彦氏（自民）　漁船の発見時刻が変わったり、あとになって航海長を防衛省に呼んでいたことが出てくる。隠ぺいとは思わないが、疑問を払しょくしてもらいたい。　　石破茂防衛相　海上保安庁との調整や、正確性を期すには時間がかかる。それを「遅くて小出しで隠ぺいだ」と先入観を持って評価されるなら、その方の考え方、価値観だ。　　前原誠司氏（民主）　航海長の聴取を海上保安庁の頭越しに防衛相自ら行った。証拠隠滅や口裏合わせの疑念は生じないか。　　冬柴鉄三国土交通相　何が起こったか防衛省として調査するのは当然だが、捜査妨害の疑いを受けるのは望ましくない。　　前原氏　２５日の衆院予算委で防衛相は「乗組員に接触することは捜査の厳正公平を確保するためにしていない」と答弁したが、事故の日に航海長から話を聞いた。うそを言ったことにならないか。　　防衛相　「現在のところ」と言った。乗組員から聞き取ることは問題だとは考えていない。衝突当時の状況を公表したが、乗組員から聞かなければ発表できるはずがない。　　前原氏　苦しい言い訳だ。「現在のところ」とは、それまでに接触していないということだ。居直りにしか聞こえない。日本語としておかしい。　　細野豪志氏（民主）　航海長の聴取前に、海保に伝わっているかチェックしたか。　　防衛相　当然やっているという思いこみがあった。チェックすべきだったと思う。　　細野氏　証人を呼んで圧力をかければ証人等威迫罪になる。　　防衛相　隠ぺい、証拠隠しが通用するほど海保の捜査はいいかげんではない。「隠ぺいだ」という発言（ヤジ）が相次ぐが、それならばなぜ１２分前（に漁船を発見した）という不利なことを自分から出すのか。聞き取ったことを明らかにするのと、あとから別のものが出てくるのは何ら矛盾しない。　　細野氏　航海長と会ったことを１週間話さなかったことに大きな責任がある。　　防衛相　聴取は今でもやるべきことだったと思う。海上幕僚監部や内局のみで、大臣も入れずに勝手にやったとすれば、別の観点で非難を浴びるのではないか。私は文民統制の文民としてそこにいなければならなかった。当然のことをやった。日本の捜査当局の厳正さは担保されており、捜査に影響を与えるものではない。　　赤嶺政賢氏（共産）　航海長と接触していたのに、なぜ答弁で（乗員と接触してないと）うそをついたのか。　　防衛相　「この人はうそつきだ」と思いこめば、何を言ってもそうなる。うそつきと断定されると困惑する。　　◆続く不祥事　　◇飲酒ないと信じる−−防衛相　　田端正広氏（公明）　守屋（武昌）前事務次官の逮捕、護衛艦「しらね」の火災など、自衛隊、防衛省の体質が大きな問題だと感じる。　　福田康夫首相　インド洋や東ティモールなど海外での活動で自衛隊は大変高い評価を受けている。にもかかわらずこういう事故を起こす。本当に慚愧（ざんき）に堪えません。　　前原氏　午前中の質疑で「遺族」とか「亡くなる」という言葉が出ていた。精いっぱい捜索しており、きわめて不謹慎だ。　　首相　ずいぶん注意して発言したつもりだが、間違って失礼な言い方があったら陳謝いたします。　　前原氏　艦内で飲酒していたとの報道がある。　　防衛相　艦長の答申書では「２月４日のパールハーバー停泊中の米海軍関係者との艦上レセプションを除き、酒類を使用させたことは一切ない」と言っている。そういうことはないと信じている。　　前原氏　漁船とぶつかるのは信じられない。自爆テロ船に対して脆弱（ぜいじゃく）だ。　　防衛相　テロ船をきちんと把握できる体制で動かしているが、今回、なぜ考えられないようなことが起きたのか、検証する必要がある。　　◆防衛相の進退　　◇体制再構築こそ責任−−首相　　笠浩史氏（民主）　「１２分前」情報を２０日８時半に確認して、夕方５時に公表したのはなぜか。なぜ最優先しなかったのか。　　防衛相　１９日、２０日に第一に優先するのは遭難された方々の救助だった。海保や自民党、マスコミの対応もあり、私がすべての優先順位の判断をなしえなかったかもしれない。あとになれば「ああすればよかった」ということはある。　　浜田靖一氏（自民）　防衛相の責任論の話が出ている。　　防衛相　一番つらい思いをしている方の気持ちにこたえるのが責任の取り方だ。それにこたえられているか、自分の胸に手を当てて対応し、自分なりの判断をしたい。軽々に辞めることが、その気持ちにこたえることだとはこの段階ではいささかも思っていない。　　辻元清美氏（社民）　（航海長聴取に）関与した人が真相究明するのは不向きだ。けじめを付けて前に進むために決断をする時期だ。　　福田康夫首相　石破防衛相は全体の指揮をとる責任がある。一番よく今回の問題と、昨年来の諸問題を理解し、改革の方向性を持っている石破氏が防衛省・自衛隊の体制を再構築する。それが石破氏の最大の責任だ。　毎日新聞　2008年3月1日　東京朝刊